過敏性腸症候群について

過敏性腸症候群(IBS)とは、腸に器質的な問題はなく、下痢や便秘等の便通異常、腹痛や腹張、腹鳴、無意識に出るガス、肛門の違和感等、機能的に腸に問題が出ている状態を言います。

 

人により症状は様々ですが、頻回な腹痛やトイレ、においへの不安等、肉体的・精神的な苦痛は他の疾患と同様、本人を苦しめ日常生活に支障をきたします。

 

学生の方だと学校を休みがちになったり、社会人の方なら腹痛や連続的に起こる便意で仕事に支障をきたします。また対人関係に対して消極的になる方も多いです。

 

自律神経は体の様々な機能を調整していますが、腸の働きもその一つです。

緊張する場面では腸の動きを止め、リラックスしている時は消化を促すため動きを活発にします。

 

本来はそのように上手く調整しているのですが、極度な緊張状態に陥ったり、ストレスの強い環境に長く身を置いていると、腸に過剰な運動や痙攣が起こり、下痢や便秘、ガスの発生を引き起こします。

 

この状態が一時的なものであればすぐ元に戻るのですが、ストレス過多な状況が続くと、腸の異常な動きが習慣化し、体に定着してしまいます。

 

こうなると元に戻すのは難しく、更には「症状がまた起こるのではないか」という不安や、痛みに対する過剰な反応も起こる様になり、いよいよ症状を治める事が難しくなっていきます。

 

これに対し、鍼灸治療では、薬のように対症療法的に症状を調整するのではなく、根本からの改善、つまり腸の働きをコントロールしている自律神経の正常化を図り、腸の過剰な反応を落ち着かせ、以前の正常な状態に体を戻す治療を行っていきます。

 

そうすれば、継続的な症状は無くなり、ストレスを受けて腸の異常が起きてもその状態は長く続かず、自分の体の力だけで症状を落ち着かせる事が出来るようになります。

 

ある患者さんは小学生の頃にIBSが始まり、腹痛は勿論、ガスが勝手に出たり、自覚は無いが漏れている気がするという症状に悩まれていました。

病院で検査や治療を受け、自分でも食事や生活習慣に気を付け、出来る事は積極的に行っていましたがそれでもなかなか改善されないままでした。

薬を服用しつつ、なるべく気にしないように症状と付き合っていましたが、ある時、鍼灸がIBSに効果がある聞き、治療を始められました。

 

結果から言うとこの方は半年ほど通院し、9割程度症状が無くなったところで治療終了となりました。

 

始めは劇的な変化は無く「うーん、少し良くなったかな…?」と効果に対し少し懐疑的でしたが(鍼灸に対して過度な期待があったのかもしれません^^;)、

5回、10回、と続ける内に徐々に症状が改善し、週1回の鍼灸治療を半年間続けた所で状態はかなり安定し、漏れている気がするという症状もいつの間にか無くなっていました。

 

後は、以前の1/10程の頻度で起こる腹痛やガスが溜まった感じはありましたが、これも前の様に長くは続かない(体本来の機能が働き、自力で症状を落ち着かせられるようになった)事、またその症状はIBSでは無い人でも出るものだという事で、ご本人と話した結果、治療を終える事になりました。

 

IBSは、治療期間はかかりますが(症状が出てから期間が長い程、改善にも相応の時間がかかる事が多いです)、多くの方が鍼灸治療により改善が見られる疾患です。

 

お薬や、自分の努力だけでは変化が見られない場合は、鍼灸という選択肢も考えて頂ければと思います。

悩まれている方は是非一度ご相談下さい。